娼年
石田衣良先生の「娼年」を読みました!
毎年夏頃から集英社文庫が開催しているナツイチというブックフェアの対象作品なんですよ!
ぼくを、買ってください――。
男娼になったリョウ、ひと夏の鮮烈な体験。
という帯に惹かれ即購入しました!
この「娼年」という作品は姫野カオルコさんが書いていらっしゃる解説にもある通り「主人公は森中領。二十歳。彼が女性に肉体を売る仕事をする話」なんです。
ストーリー説明としては、ただ、それだけのシンプルな話です。
私は本を読む際に、「作家さんの息遣い」というものを意識して読んでいるんですけど、石田衣良先生の本は初めて読むのでドキドキワクワクしながら読みました。
もうね、びっくりですよ。
この「娼年」という作品は先ほど説明したように一行で終わるほど単純な小説ではないと断言できます。
私の語彙では語れない程の感動を得ました。
森中領は数々の客と仕事をこなす中、自宅でひとり考えを巡らせる場面があるんです。
そこで主人公は「ぼくは娼夫になり、より自由になった。以前から人を外見や性別や年齢や仕事で判断する傾向は人よりすくなかったと思う。それがますます減って、その人の話をきちんときくまではすべての判断を保留するようになった。」と考えています。
その文を読んで、森中領という人間は私の中の「理想像」そのものだと思いました。
人間というものは先入観で勝手なイメージを持ちがちです。
それによって争いが起きることも珍しいことではないと思います。
「きちんと話を聞いて、相手のことを理解する」先入観で判断しない森中領という主人公は素晴らしいと思いました。
娼年はタイトルから察せる通り人間の欲について綴った作品なのにも関わらず、読了後こんなにも優しく、暖かな気持ちになれるとは帯をみただけではわかりませんでした。
この本に出会えたことに感謝を!